中垣:別にそのための方法を模索しているとかではないねんけど…ニューヨークの右上、セントラルパークの東側のアッパー・イーストって呼ばれるエリアがあるねんな。
松田:はいはい。
中垣:フレンズとかゴシップガールとか、ああいう昔ながらのセレブリティが住むような、東京やと松濤とか城南五山みたいなとこやと思ってくれたらいいねんけど。
松田:はいはい。
中垣:おれがそこを歩いてると道を譲ってもらわれへん…というか、狭い歩道でお互いが向かってきたとき、絶対に向こうはよけへんのよね。
松田:なるほどね。それ最終的には中垣が譲るんやんな、別に肩ぶつけにいったりはせんよな?
フィジカル弱いくせにぶつけて揉めるアホ
中垣:そうやね、おれはぶつけにいったりはしないね。
松田:まあそう。
中垣:…やってんけど、先週風邪が治った病み上がりでメトロポリタン美術館に行こうと思って。それでどういう服を着ようか考えてんけど、あまり元気がないからチャレンジしたい気持ちもなくて、それで普通にパーカーとジーパンみたいな、自分の美学が反映されている範囲で一番ノーマルな服装をしてたのね。
松田:はいはい。
中垣:そしたらあいつら、めっちゃよけてくれるねん。まあよけてくれるっていう言い方もおかしいねんけど、でもみんな普通によけるねん。むしろ俺がよけへんくらいで、「あれこれなんでやろう」とか思って。
松田:うんうん。
中垣:あまりに病気でしんどそうみたいなんではないんよ、別に回復はしてるから。
松田:はいはい。
中垣:ここでちょっと思ったのが…もちろんサンプルが少ないから感覚的な話やねんけど、彼らが道を譲らないときに起こっていることって、別に人種差別ではないんじゃないかと思ってん。
松田:はいはい。
中垣:要は彼らとしては、きっと人間たるものこうあるべきみたいな美学があるわけじゃないですか。それを実践できているかどうかの指標が明確にある感じがするというか、彼らとしてもそういうことで守ってきたエリアでもあるし。
松田:なるほど。分かる、分かるで。
中垣:そこで普段のおれが、いろんな色の服を着て「やったるわい」みたいな感じで歩いていたら、それは土足で踏み入られている気にもなるというかね。
色多いときそういう気持ちやったのね…
松田:そこで道を譲らないことによってね、彼らのアイデンティティが守られる部分もあるわけやしね。
中垣:そうそう、それをなんか直感した。まずもう目線が違うねん、よけへんときっていかにも排斥的というか、異物を見るような目線なわけ。
松田:うんうん。
中垣:でもよけるときって「こんにちはいい天気ですね」みたいな感じなわけよ。いつもと違って自分には元気がなくて、言うたら慎ましやかながら最低限の美学は実践しているっていう、そのスタンスに向こうからしたら「そうそう」ってなるわけ。
松田:笑
中垣:しかもわざわざ「そうそう」ってなるまでもなく、それを一瞬で見て判断してるんやろうなとか思って。なんかすごく納得してしまったよな。
松田:まあそれにな、そういうこと自分も別にするしな。
中垣:そう考えると妥当っちゃ妥当なのよね。彼らはずっとそこに住んでいて、自分たちの場所なわけで。ある意味すっきりはしたかな。
松田:まあ…だいぶ適当な例やけど、東京ミッドタウンで地方のイオンみたいなやつが騒いでたら、そら蹴ろうみたいな気持ちにはなるやん。
中垣:気持ちにはね笑
松田:それで実際に蹴ったらあかんねんけど、でも心の中では蹴るやん。おれはそんな自分が嫌いじゃないし、今後の人生それでええと思ってるねん。そういう感じやんね。
中垣:うん。だからこれさ、人種差別とは全然違うやん。
松田:そうやんな、全然ちゃうよな。
中垣:メンタリティとしては全然違うねんけど、そこを取り違えることって多そうというか、なんならほぼそうなんじゃないかくらいに思うよね。
松田:あ、人種差別的なそれがね。
中垣:そうそう。人種がどうというよりは…そこをホームにしている人たちの、自身の文化の蓄積に対する誇り、それは尊重しろよろいう目線が大きいような気がするねんな。
松田:郷に行っては郷に従えね。
中垣:もちろん確かにそれだけではないねん、例えばじゃあ日本人がフランスに行ったときとタイに行ったときでは、レストランでの注文のしやすさが違うのはみんな感じることやと思うねん。
松田:はいはい。
中垣:ただいったんのところ単純化してしまうと、別にどんな人であってもさ、しゃんとしてピシッと服を着てたら、あんまそういうトラブルってなさそうやん。そういう適切なハリがあればさ。
松田:分かるよ。ほんまにまじで1ミリも知らんけど、誇り高き華僑みたいなやつやろ。まあまじで雰囲気でしか言ってへんねんけど。
好きな映画のひとつ。これに出てくる中国人青年は今回の例によく当てはまります。
中垣:笑 まあすごくセンシティブやけど、そういう認識の方が健全な気がするな。
松田:あとはあれやね。この捉え方がいいのは、彼らと外形的には必ずしも同じ振る舞いしなくていいんだという点やね。
中垣:そうそう、別にしなくていいんよ。おれも実際にしていなかったし、そもそもの見た目も違うからね。
松田:なんていうのかな…要は実家のソファに座っているような、ほんまの意味で泰然としたマインドでおるんであれば、どこに行っても大丈夫というか。
中垣:そう、そうやんね。
松田:もちろんそのマインドであればそうはならんでしょというか、そのマインドの欠如の証明となるような振る舞いも一定はある気がして、そういう意味では外形的な条件もまあなくはないと思うけどな。
中垣:あとこれさ、オールドマネー的な話とも近いよね。
松田:思う思う。
中垣:正しい意味での保守、みたいな。
松田:つまり…まあ難しいけど、例えば時計ならパテックでもスウォッチでも実はどちらでもいいんだけれど、でもウブロはだめみたいな。
中垣:うんうん。
いま買える中ならこれが好きだし、買った
松田:そこで仮に中垣が派手な服装をしていたのだとすれば、それはウブロを着けていたのと同じことになるんやと思うねん。
中垣:あ、でもめっちゃ分かる。それはほんまにそうやな。
松田:そういうものでさえなければ、パリッとしたスーツでも、そのときの中垣みたいな格好でも、それはパテックかスウォッチかの違いなだけで、本質的な問題はないんやと思うな。
中垣:そうやんな、そうやんね。
松田:ただしスウォッチを着けていて、そのことを恥じていそうな雰囲気であればそれはそれであかんかったりする。これ難しいとこやねんけどな。
中垣:そうやな、それはそうや。しかも実はウブロでも問題ないやつもいたりするんやんね。
松田:まあ…原理的には否定できない、まずいないと思うけど。
ウブロとかいう精度抜群の試金石
中垣:だから変に気も使わない方がいいしね。自分は相手のことをリスペクトするし、相手にも自分のことをリスペクトしてもらうしみたいな。
松田:そうやんね。求められるのはリスペクトをするし…自分がリスペクトされることも知っているっていう感じじゃないかな。より自分的にしっくりくる言葉で言うと、他人のことは脅かさないし、自分が脅かされることも知らないっていう感じ? そのことを一挙手一投足を通じて表現できていることが大事な気がする。
中垣:そのリスペクトするしされるしっていうことの実践、これ松田は昔からたぶん上手やん。
松田:そんな気はする。
中垣:わりとずっとそんな感じやと思うねん。でもこれは普通にいいことやと思うねん、場面次第で程度は変わるにしても、わりとみんなした方がいいと思う。
松田:まあそうやんな。
中垣:それを具体的にどうすればいいのってところまで言語化できればいいねんけど…でもそうなるとなかなか難しいよね。
松田:うんうん。
中垣:言ったらこれさ、『嫌われる勇気』とかと同じところがあるやん。結局おれは読んだことがないんよね、それは読む必要がないから。
松田:はいはい。
中垣:でも逆に、読む必要があるやつは読んでも実践ができないんよね。もう全部そうやんか。
松田:まあ確かにな…
中垣:そこの糸口がより具体的な説明によって開かれるのであれば…いいなと思ってんけどな。まあちょっとすぐには難しいよな。
2024年10月12日
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