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ISSUE 7 Nov 12, 2024 8mins read

m-flo、ほんまに好きでよかった

UK garageと2stepの影響を受けて☆Taku Takahashiが曲を作って、そこにアメリカの影響を受けたVERBALがラップをのせて、そのバトンをXGのためにずっとそこで握っててん

松田:ガッシュがええのはさ、なんかほんまにわけ分からんみたいなやつがいっぱいおんねん。

中垣:そっか、普通にダイバーシティみたいな感じなんや。

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雷句誠『金色のガッシュ!!完全版(1)』BIRGDIN BOARD Corp.

松田:そう。なんやろうな…ラベルを超えた先にある、ほんまにクラスにいそうな感じの多様性やねん

中垣:世界ってこうじゃん、みたいな。

松田:そうそう。

中垣:例えばさ、ボーボボとかブリーチってカオスなキャラいっぱいおるやん。ああいうのは好きなん?

松田:まずな、機会の問題でそのどちらも知らんねん。ガッシュに関しては実家に全巻あったからそれで知っているだけで。

中垣:はいはい。

松田:し、別に自分が好きで買ったわけでもなくて、あったから読んだだけやねん。

中垣:それも不思議やけどね。

松田:祖父母が書店やってたから、ちょっと欲しいとか言ったら全巻投下されるみたいなんがあってん。それで弟が言ってうちにやってきたんかな。

中垣:そうか、なんかそういう話あったな。

松田:だからガッシュについてしか知らんねんけど…ガッシュって出てくるみんな怪物みたいな感じで、あいつらが人間とニコイチになって王様決定戦を地上でやってるって話やねん。

中垣:あ、そうなんや。はいはい。

松田:ほんでガッシュが最後まで勝ち抜いて王様になるって話やねんけど…ここで大事なのは、ガッシュはやさしい王様になって、みんなで仲良く暮らしたいねん。負けたやつは基本そこで終わりで身体もなくなるみたいなノリやったはずやねんけど、自分が王様になって負けたみんなも元に戻してあげたいねん。

中垣:そういうことか、勝てばいいってだけではないんや。

松田:そう。戦いながらみんなが仲間になってくれるし、ガッシュを信じて託してくれる感じやねん。ガッシュは勝つねんけど、敗者を圧倒して排除するのではないねん

中垣:なるほどね。それでいうと松田はブリーチは好きじゃないと思うよ。おれもあんま好きじゃない、悪ノリがすぎるのよ。ボーボボは小学生みたいなことずっとしてるからいいねんけど。

松田:なるほどね。

祖母は当時、何度教えても『ボボボーボ・ボーボボ』が言えず困ってました

中垣:やっぱり外部性がないというかさ、そこを通じて世界に繋がっていく感覚に乏しい作品やと思うな。ノリは悪くないねんけど、でもちょっとXっぽいかな。

松田:それはちょっとあかんね、外を向いてるふりして内側しか見てへん感じね。

中垣:そうやね。

松田:あとガッシュな、最後にまじで救いがたく闇の側で、闇すぎてもはや光みたいなやつが敵として残っててんけど、そいつもちゃんと最後は元に戻してあげてたような気がする。

中垣:なるほどね。でも松田が好きなものって実際松田が好きそうやし、それっていいよな。

松田:あ、ほんまに?

中垣:だってm-floも松田好きやん? 音楽としてというよりはグループとしてというか…PVの感じとか。

松田:それはそうやな。

中垣:それはやっぱり分かるもん。つまり松田が好きっていうのとおれが好きっていうのが重なるポイントがm-floなんよ。

松田:なるほどね笑

中垣:おれは音楽路線で好きやねんけど、きっと松田は世界観路線で好きやし、おれもあの真の意味でのインクルーシブさみたいなものに救われている部分はあるし

松田:真の意味でのインクルーシブさ、それはまじであるな。

Aと、それと背反なĀが存在する(ように見える)とき、AでもĀでもいいよねというスタンスはダメダメの1.5流、見せかけのインクルーシブです。
AとĀとの分別は観念の上での虚構にすぎません。その境界が引かれる以前、対立の残滓さえ拭い去られた地平から立ち上がる無分別の存在を認められるか、これこそがinclusivityにとって最大の試練と言えるでしょう。

中垣:そうそう。あとは彼らの生い立ちが特殊っていうのもあるし…てかおれXGがすごいって共有メモに書いてたやん?

松田:あれほんますごかったね、おれこの一週間ずっと聴いてたもん。

XG / YouTube

中垣:分かる。おれも一週間ずっと聴いてるし、PVもずっと見てる。

松田:おれも大きいモニターにほんまに見なあかんやつ映して、ラップトップのディスプレイにこっそりPV流してた。

中垣:あれはやばいよな。もちろん音楽だけで言ったらすごい音楽なんていくらでもあるねんけどさ、総合的にというか、おれ的に一番しっくりきている表現で言うと…あれはいろんなものを浄化してると思ってん。

松田:はいはい。一番最初のフェーズにおいてはさ、何かとの対立においてしか表現し得ないものってあるわけやん。そういうのを全部詰め込んで、かつ摩擦がない感じがすごくある

中垣:あ、そうやな。それめっちゃしっくりくるな。そこに写っているどのピースも、この時代にああいう表現をすることで、全てが自然なものとして形になっているっていう

松田:うんうん。

中垣:金字塔じゃない、あれまじで。

松田:あのPVさ、ずっと「普通ですけど」みたいな感じやん?

中垣:そう、でもあれおかしいよね。ずっとおかしいねん笑

松田:あれがいいねんな。

中垣:あれ絶対AIめっちゃ使ってるやん、でもそれがいやらしくもなくてさ。だからちょっと…2024年まで生きていてよかったって、ああいうの見ると思うよね。

松田:いやほんまに。

中垣:実家帰ったらおじいちゃんとかおばあちゃんに見せてあげようかな。絶対分からへんと思うねんけど、でもあなたはこういうのが生まれる時代まで生きたんだよって伝えたい。

鬼じゃん

松田:いや、あれはすごい好きやったな。

中垣:他にもあれはいろんなレイヤーですごくてさ、例えば…まあ松田の方が楽しめる部分もあると思うねん。

松田:はいはい。

中垣:あれはもうひとつの見方としては、日本-韓国-アメリカの文化のバトンという側面があるわけ。日本-アメリカというインタラクションを通じて積み上げられた文化は既にあって、韓国とアメリカとの間でもそれはあるわけですよ。

松田:なるほどな。

中垣:BTSとかBLACKPINKとかね。ただ残念なことに日韓の文化はさ、アメリカとかヨーロッパを経由しないとインタラクトできない部分があったりするわけやんか。

松田:まあ言いたいことは分かる。事実がどうかは知らんが、日米韓やと軍事演習できるけど日韓やとなんかちょっとちゃう感じになるみたいな。

中垣:あ、そうそう笑

松田:事実がどうかは知らんで。

今日のレトリック
「事実がどうかは知らんが」

中垣:…みたいな中で、m-floというグループいるわけやん。VERBALは韓国人やし、LISAはコロンビアにルーツがあって、☆Taku Takahashiは日本人で、3人ともアメリカンスクールで出会ってて。

松田:はいはい。

中垣:てかVERBALって結構エリートなんやんね。日経新聞のインタビュー読んだことある?

松田:ないわ。

日本経済新聞

VERBAL なぜ米エリート証券マンからラッパーに? – 日本経済新聞

中垣:読んでみてほしい、なんか結構すごかった。VERBALってアメリカの大学出て現地で就職して、しばらく証券会社で働いてるねん。

松田:ばりおもろいやん。 

中垣:なんか普通にエリートやねん。ただラップも好きやからって感じで。で…m-floってすごいグループやんか。絶対にそのポジションからはブレないというか、J-POPっちゃJ-POPやねんけど、でもずっとm-floであり続けてさ。

松田:うんうん。

中垣:きっとメンバー全員どこかでアイデンティティクライシスがあっただろうし。それで…the Love Bugって曲があるやん、あれなんかはfeaturing BoAやからね。

松田:うんうん。

中垣:もちろん韓国にルーツのある人が日本の芸能界で活躍するみたいなのは昔からあったわけやけどさ、韓国の人が韓国人として日本でデビューするみたいな例はBoAとかくらいからやん。

松田:はいはい。

中垣:そもそも今のK-POPを見れば分かるけど、韓国とアメリカって独特の結びつきがあって、ヒップホップ文化は韓国の方が圧倒的に進んでたっぽいねんな。だからVERBALは結構難しいはずやねん、実は韓国でやった方が評価されやすい音楽を日本でやってたみたいな。

松田:はいはい。

中垣:その3つの国の間に立っているような感覚がすごく強かったであろう中で、それでも日本でやって、BoAをフックアップして…それでthe Love Bugの歌詞を見てみるとさ、サタデイにライミングする形でサランへって言ってるねん。これをやってるのは絶対にBoAやからなんよね。

松田:なるほどね。

中垣:その辺をどの程度に見せるかっていう、それはすごく難しかったんじゃないかと思うねんな。だって今ならまだ話はちゃうけどさ、20年前でしょ。そこで我慢した部分もあったんじゃないかな。

松田:まあまあ。

中垣:そういう文脈があって、ようやくBTSとかBLACKPINKみたいに突き抜けた王道の存在が出てきて、その結果NewJeansみたいなものも変化球として出せるようになるわけやん。

松田:うんうん。

中垣:そのNewJeansが採用した音楽っていうのが、USヒップホップではなくてUKのクラブサウンドなわけやん。2stepとかgarageとか。

松田:うんうん。

中垣:そこで「おやおやそれは20年前の日本でやってたやつがいるんだぜ」ってなって、それがm-floなわけやん。で…XGっていうグループはちょっと特殊やねん。メンバーは日本人やねんけどプロデュースの体制は韓国のそれなんじゃないかな、だってあのクオリティってちょっと異様やし。

松田:なるほど。

中垣:そこでm-floの曲をサンプリングするっていうのは、単純にいい曲だからってサンプリングする以上の意味があるわけよ。

松田:なるほど。

タタタラタラタッタ〜🎵

中垣:要は全員が手を繋いでんのよね、泣けるよね。

松田:ひとつの達成やね。

中垣:そうなんよ、ほんまに。文化ってこうだよなって。UK garageと2stepの影響を受けて☆Taku Takahashiが曲を作って、そこにアメリカの影響を受けたVERBALがラップをのせて、そのバトンをXGのためにずっとそこで握っててん

松田:はいはい。

中垣:それで、やっと韓国でBTSとかBLACKPINKが出てきて、NewJeansも出てきて、その影響を受けて日本でも韓国のやり方でアイドルをプロデュースしようって流れがあってXGが出てきて…そのXGが採用したサウンドがm-floのサンプリングやったわけ。

松田:おお、すごい。

中垣:そういうコンテクストがあって、そこにのっている曲もPVもあのクオリティって、もう敵わないよね。東アジア音楽の金字塔じゃない?

松田:うん。

中垣:一人の天才による何かとは別のものとして、いろんな人が関わりあって生まれたものとして、共同で作る何かとしてね。

松田:なるほど。

中垣:まあm-floはね、ちょっと早すぎたんやろうなとは思う。もうちょっとあくがあった方がいい時代に、あそこまで達観したものを出すっていうのはね。

松田:おれがm-floの音楽について分からんなりに分かるのがさ、あまりに風通しがいいというか、カラッとしてるのよね。それは聴けば分かるな。

中垣:してるしてる。それはいろんなところに現れていてさ、例えば☆Taku Takahashiの作るサウンドの躊躇のなさとかね。あれはほんまに彼がそのときどきではまっている音楽をやってるだけって感じやから。だから初期の2step以降はおれはあんまり聴かへんねんけど。

松田:なるほど。

中垣:あとはフィーチャリングする相手、m-floの場合はlovesって言うけど、いい意味で見境がないんよね。だって和田あきこもやってるくらいやし…これもきっと意味があるんやって。

――結成4年の02年になぜLISAさんが脱退したのですか。

「m‐floがデビューした直後から曲がヒットしたのですぐに仕事で忙しくなってしまいました。僕らも結構、頑張ったと思いますが、どうしてもストレスがたまると互いにピリピリしてくる。それにLISAは以前からソロ活動に専念したいという強い気持ちがあったようです。『脱退したい』と突然、LISAから告げられたときは、僕からすると、やや唐突でショックを受けました。せっかくm‐floとして売れていて、色々なことができるのにもったいないなというのが正直な気持ちでしたが、『本人が脱退したいと言っているのだから仕方がないか』と最終的に判断しました」

「ただ困ったのがボーカルです。そこで固定ボーカルは置かずに、毎回異なるゲストボーカルを迎えて曲を作るという『Lovesプロジェクト』を始めてみることにしたんです。これは米人気歌手のファレル・ウィリアムスさんが率いるプロデューサー・ユニット『N.E.R.D』のようなフィーチャリング(客演)文化が根付いている米国のモデルをベースにした発想です。これまで坂本龍一さん、和田アキ子さん、Charaさん、BoAさんら40以上のアーティストとコラボしてきました」

日本経済新聞

m‐flo、15年ぶり完全復活 VERBALが語る絆 – 日本経済新聞

松田:うんうん。

脱退後のLISAと一緒にヒモとして世界一周旅行に行った(と言って憚らない)知り合いがおる顔

中垣:もう全員とやってるし、それをlovesって言ってるのも素敵やん。もちろんBoAもやるし、Crystal Kayみたいなこれから出てくるR&B歌手もフックアップするし、遡ればDev Largeともやってるし。

松田:うん。

中垣:もうあらゆるジャンル、年齢、性別、ルーツのアーティストがm-floには登場するねん

松田:ええやん。

中垣:まあその見境のなさが自分はm-floのファンですと言いにくくしているところもあってん、好きな曲もそうじゃない曲もあるから。でも今はむしろそれがええんかなって思ってる。

松田:うん、めっちゃええやん。

中垣:m-floはまじですごい。ほんまに好きでよかった。

松田:今回のタイトル、それで決まりやな。

2024年10月26日
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